ハザードが点きっぱなしの車を直せ!

車のこと

本日の入庫車両 平成6年式 スズキ キャリイトラック

義父からの厄介な依頼。

『何かランプが点きっぱなしだから見てくれねーか。あと、ヒーターが動かないみたいだからそれも見てくれねーかなぁ。どっかでショートしてるんだと思うんだけど…。』

こんなざっくりとした引き継ぎは整備士としてありえない。
まるで素人。
お客さんなら分からないから仕方ないけど、仮にも整備士だろうが…。
マジで話にならん。
話すだけ無駄だし、更に厄介なことを言われるのも嫌だし、あれこれ口出しされるはもっと嫌なので、「見てみま~す」と言って逃げる。

故障車両の状況

素人みたいな説明されても分からん。自分で見たほうがよっぽど早い。それで分からなければお客さんに俺が電話して問診してみる。
とりあえず、車を見てみる事にする。

症状その1

ランプって言うから故障を知らせるチェックランプかと思いきや全然違うじゃんっ!

ハザードが点きっぱなしじゃねーかよ。
それ、ランプが点きっぱなしって言わないよね?子供じゃないんだからさ!
ハザードランプが点きっぱなしって分かるよね!?
いつものチッカンチッカンってやつじゃなくて、もろに点きっぱなし。
ライトみたいに。
『ハザードランプが点きっぱなしなんだ』って最初から言えよ!

こりゃ、完全にどっかで短絡してるわ。

症状その2

『ヒータが付かない』って義父は言っていたが、正確には違う。

ブロアファンが回らない。

ヒーターが付いているかどうかじゃなくって、風が出てこない。

車を預かるだけ預かって全然見てねーの?
お前の言ってること、まるで素人じゃねーかよ!
ホント、ガッカリする…。

実は合併症だった

この車の故障。ハザードが点きっぱなしと、ファンが回らないと言うのは別の故障ではない様子。

正確には、送風のスイッチを入れると、ファンが回らずハザードが点きっぱなしになる。というものだった。

ハザードとファン。

全然、関係ないんすけど・・・。

絶対にこの二箇所はリンクしない。

この二人はすれ違う事すらない。

同じアパートに暮らす住人というレベルではなく、地球で生きている程度の存在だろう。

そんな関係のはずだが、間違いなくお互いが影響を及ぼしている。

俺の嫌いな面倒なヤツだ(-_-)

調べてみる

絶対に出会うはずが無い、とは思いつつも一応調べてみる。

配線図を出してみた。

と言っても、入庫車両の年式は出てこず、だいぶ新しい型の配線図。大体同じであろうと思い眺めてみる。

しかし、いくら配線図を見ても全然分からない。

というか、やっぱりハザードとブロアファンの二人は出会わない。

これ、マジで面倒なヤツだ…。

こういう仕事は標準作業工数表には出てこない。

だって、手探りで探すしかないんだもの・・・。

故障の原因は分かってる

配線図でお互いが出会うはずがないと分かった。

同時に修理は困難を極めると絶望する。

 

出会うはずがない二人がどこかで会ってるんだ…。

 

絶望する2つの理由

作業が困難を極める2つの理由がある。

田舎ならではの故障

たまにこういう訳の分からない出会いを引き起こす事がある。

その仲介人は・・・

 

ネズミ

 

奴らが隙間から入り込んで、ワイヤーハーネスと呼ばれる配線の束を食い破りやがる。
まじで厄介。
配線の束って、テレビの裏のコードの束とは訳が違うんだよ!
場所によっては細い線が何十本とギッチリまとまってて、長さもコストダウンからピッタリになっているから余裕なし。

ディーラーに丸投げしてしまおう(´・ω・`)

という厄介さ。

我が家ならではの問題

先程の犯人はネズミ。

今度の犯人は人間。

 

ウチの義父

 

もう、コイツがマジで適当。

新車ならまだ直しようがあるんです。
原因の追求のしようもある。

しかし、人的被害は極めて困難!

その場しのぎで適当に直しちゃうからゴッチャゴチャ。

『これ、後で付け足した配線みたいだけど、何の線?何、このプラプラしてるやつ?』

といった具合に、やった本人しか分からないような暗号化されている。
もっとも、やった本人も適当にその場しのぎでやってるから、何かイジったなぁぐらいの記憶しか無いのが質が悪い。

弄ったのなら最後まで責任を持って自分で面倒見てほしい。
それが出来ないなら、初めから手を出すなって!

完全に直してやった

簡単な道のりじゃないんだよ…。

配線を追ってみる為にバラす

ハザードスイッチ、送風のスイッチのスタート地点から追ってみるしかないから、とにかくバラす。

ハザードスイッチを見るためにハンドルを外して、メーターパネルも外す。
ネジが2,3本無かった。
オヤジの仕業だろう。
ネジが足りなくて気持ち悪くないのだろうか?神経を疑うわ。そういう人間と思って頂きたい。そういう非常に厄介なヤツなのだ。

整備工場なら当たり前の光景だろうが、ハンドルを外した眼の前がバラバラになった状況を見て貰えれば整備代が高いのも納得してもらえると思う。
残念な事はその写真を撮らなかったことだ…。俺のバカ!

で、バラして分かった事は、バラした所は悪いところはない。
そして、ファンの配線、ハザードの配線が運転席のドアの方に向かっているという事。

変な場所を見つけた

明らかに後から巻かれたであろうビニールテープ。
その中には適当にまとめた配線。3本が1本になっている。
アース線だろうが、なんとも危うい繋がり方。
3本がギュッと一本にカシメられているだけ。
はんだ付けしてあるわけでもない。
この場所が物凄く怪しい。
オヤジの仕事に違いないと容易に想像できる。
もはや、どこのアース線か調べるのも面倒。
送風のスイッチを入れて、この場所を弄ってみた。

が、なんとも無い。
この怪しい場所は問題ない。

何となく特定

先程、オヤジが適当な仕事をした5センチ先に大きなコネクターがある。
普通はコネクターごとしっかりどこかにセットされるのだろうが、プラプラしている。

そのプラプラしているコネクターを揺するとファンが動いたり止まったり。
その度にハザードも点きっぱなしになる。

故障の原因はこのコネクターの周辺にあることは間違いない。

そして、今は全く問題なくファンも動くし、ハザードも正常。

ここで葛藤が生まれる

どこかハッキリとは分からないけど、今は問題なく動く。

コネクターをゆさゆさイジるとファンが止まるし、ハザードが点きっぱなしになる。

オンボロの軽トラ。
そして、扱われ方は雑で、年中汚い。
おまけにベッコンベッコン。
社用車なので、大事に扱おうという気がないのだろう。

そんな車を完璧に直す必要があるのか?

ばらした部品を全て元通りにしながら考える。

完璧に直すか、それとも今は動くからそのままにしておくか。

ってか、コネクターが外れないんですけど…。

ただでさえ古い車は外れにくい。
なのに、10何ピンもあるデカイコネクター。
どんだけくっついてんだよ・・・。
ホントイライラする。

こうしたイレギュラーで整備代は上がると思う…。

 

しかし、そのままにして返してはオヤジと同じ。

逃げだ。

幸い時間はある。

原因を突き止めて、完璧に直してやろうと決心する。

見つけた原因

コネクターを何とか外してやった。
ちょっとした工夫で簡単に外せたんだけどね。もっと頭が良かったら簡単に外せたんだろうと思う。

で、外したコネクターをよ~く観察してみた。

やはりアース線が問題だったようだ。

コネクターの中でアース線だけが錆びていて、接触が悪かったみたい。
普通は外せないコネクター内の配線を、これまた企業秘密の裏技(何てことないただの細い自作の工具を使って外しただけだけどね…)を使って直接つないでみるとスッカスカ。
なぜか、この配線だけ錆びていた。

サビを落として、スカスカだった接続をキツめに直してやって元通り。

完璧に直りましたよ!

おわり

一生出会うことが無いと思われていた二人が出会い、悲劇を起こす。

映画でもありそうな物語が車の中でも起きているとは…。

まぁ、原因を突き詰めていけばオヤジのせいだと思う。
理由は2つ。
普通はそこでまとめないだろうというアース線の配線。
もう一つは、必ずこぼすブレーキオイル。今回のコネクターはもろにブレーキフルードが溢れると掛かる場所。もしかするとそれも原因なのかも知れない。

極論ですが、中古車を買うって事はこういう事をされているかも知れないという事。

このオヤジの仕事ぶりを見てから、絶対に中古車は買わないと思った私です。

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